私はたまに日高屋へ行く。
日高屋は値段の割りに味とボリュームがあるので好きなのだ。
今日も恵比寿の日高屋へと足を運んだ。
飯時の時間帯を外して行ったので客はまばら…
というより私を含めおばさん二人組しかいない。
店員さんに二人掛けのテーブル席に案内され、私はそこに座りメニューをみる。
今日は何を食べて満たされようか…
ん?これは?う…うまそう。
よし、これだ!五目あんかけラーメンにしよう!
メニューの中の五目あんかけラーメンは私の中でひときわ輝いて見えた。
もうそこにしか目がいかない。
そそくさと店員さんに注文。
私の頭の中のアドレナリンが、
早くこないかな…早くこないかな…五目ラーメン早くこないかな…
と、のた打ち回っている。
10分後…
「お待たせしました~」
目の前には五目あんかけラーメンが
「やぁ、ナナオさん、僕を選んでくれてありがとう。満足いくまでたくさん食べてね。(キラーン)」
と言わんばかりに湯気をたてながら美味しそうに輝いていた。
「いただきます!」
私のお腹空き度も限界MAX。
一心不乱に食べる。食べる。食べる。
と…
店の自動扉が開く。
ツカ、ツカ、ツカ。とヒールの甲高い音。
そしてその音は私の目の前でピタリと止まる。
…そこには
黒のスーツに身をまとった、いかにも「仕事できますよ」感のある女性が1人店内に入ってきた。
誰?あんた誰だよ。私この人、知らん…
なのに…
なのに…
知らん人なのに…
客席、そこら中、ガランと空いているのに…
その女はなんと私の目の前に…対面(といめん)に座ってきた…
へ!?
そしてその女は私のメニューを指差して言う。
「これと同じもので。」
は!?
まったくわからない。
まったくパニック。
目の前で何が起こっているのか全然理解できなかった。
これだけ客席が空いているのにナゼ私の対面(といめん)に座る?そして「これと同じもので。」って…映画でしか聞いたことないセリフだわ!…かと言って、この女に「あなたは誰ですか?」「なぜ私と同じものを注文したのですか?」…などと質疑応答する理由もない。それよりなにより私は今目の前のGOMOKU ANKAKE RAAMENに夢中なのだ。GOMOKU ANKAKE RAAMENをとにかく美味しく食べて、ただただ満足感にひたりたいだけなのだ。だから私はこの女になぜここに座っ…
一人妄想にふけこんでいたら…
女は席を立ち、店を出た。
仕事の電話か何かだったのだろうか…
まぁいいや。心落ち着かせよう…
などと一人で目の前で起こった出来事を整理しようとしている間に、謎の女が注文した五目あんかけラーメンが私の対面(といめん)の席へと運ばれてくる。
女は戻ってこない…
仕事の電話で取引先とトラブルでもあったのだろうか…
まぁいいや。ズルズルパクパク…うん、美味い!ズルズルジュルルー
女は二度と戻ってくることはなかった。
…
なんだか腑に落ちないが…
私も次の予定があったので、五目あんかけラーメンを食べ終えると、そそくさと会計のためレジへ向かう。
すると店員さん
「お連れ様のラーメンも含めて1220円になります」
へ?
店員さんに事情を説明してその場は凌いだが…
なんだったんだあの女は一体…
お話は続く…